変化する旅行トレンド
ここ数年、旅行業界はかつてないほどの大きな変化を経験しました。そして、その中心には、SNSの普及とコロナ禍という二つの大きな要因が存在しています。
SNSの普及で人々はガイドブックや著名人、マスメディアが発信する情報だけではなく、見知らぬ人が投稿した生々しい体験まで、誰でも手軽に全世界の情報をほぼリアルタイムで得られるようになりました。また、情報を一方的に受け取るだけではなく、自分の経験も積極的に発信する人が増えました。旅行先を選ぶときに、InstagramやYouTubeなどでみた美しい写真や動画が大きな影響を与えていることはもはや言うまでもない事実となり、旅行業界のマーケティング戦略にも大きな変革をもたらしました。
また、コロナ禍は文字通り「全世界の旅行を中止」させ、旅行業界に深刻な打撃を与えました。このような経験は人々の旅行への価値観にも影響を与え、新たな形での旅行体験が注目を集めました。
そして今、本格的な「アフターコロナ」を迎え、旅行業界は急速に回復したインバウンド需要を中心に新しい変化を迫られています。日本政府観光局によりますと、2023年に日本を訪れた外国人旅行者は推計で約2500万人に達し、コロナ禍前の8割近くの水準まで回復したようです。一方で、Googleで提供する検索キーワードの人気度の動向をみると、「旅行」、「観光」キーワードの人気度は全国旅行支援が開始された2022年10月にピークに達し、多少減少しています。
「旅行」、「観光」 検索キーワード Google 人気度の動向
青:旅行、赤:観光
調査期間:2019年6月~2024年5月
今回は、このような背景を踏まえた上で、最新の旅行トレンドと共に「旅行・観光」業界でのメディアコマース活用方法について考察していきます。
2024 旅行・観光トレンド
1.ウェルネスツーリズム
まず、「ウェルネスツーリズム」とは、健康や幸福を追求するための旅行形態を指します。例えば、スパやヨガ、瞑想など、健康のための体験を旅行のプランに含めたり、それ自体を目的とする旅行が「ウェルネスツーリズム」に当てはまります。
2024年調査の「アメリカン·エキスプレス·グローバル·トラベル·トレンド·レポート」によると、「どのような旅行を計画しているか」という問いに対して「ウェルネスツーリズム」と答えた回答者が調査対象の世界7カ国平均の15%より11%も高い26%という結果となり、日本における心身を労わる「ウェルネスツーリズム」への関心は、非常に高いことが分かりました。また、「2024年に旅行を計画している主な理由は」という質問への回答で、「セルフケア」を挙げた人は日本の回答者の23%を占め、1位の「家族や友人を訪問(29%)」や2位の「行きたかった旅行先を訪れたい(24%)」に次ぐ、3番目に多い結果となっています。この結果から旅行中にゆっくりと心身のリフレッシュを図ろうとする意識の高まりがみられます。
近年、流行っている「サウナ」もリラクゼーションやデトックス効果、心身のリフレッシュを提供できるといった点から「ウェルネスツーリズム」の一種類としてみることもできるでしょう。
コロナ禍の影響で健康と幸福への意識がさらに強まったこともあり、旅行者は単なる観光以上の価値を求めているため、ウェルネスツーリズムは今後もますます注目され、成長していくことが予想されます。
2.体験旅行
Z世代を中心に旅に「非日常」を求める人が増えており、「体験」を中心とする旅行が益々注目を集めています。JTBコミュニケーションデザインと伊藤忠ファッションシステム株式会社による「Z世代の旅」に関する共同調査プロジェクトによると、インターネット調査対象者全体の45.0%が「旅行に対する感覚やイメージ」は「非日常を味わうもの」と答え、トップという結果でした。
"非日常"な感覚を与えるために重要なのは物理的もしくは時間的距離ではなく、心理的距離です。例えば、首都圏で住んでいる人にとって自然が豊かな地域やスポットはもちろん非日常な場所ですが、都心であっても新しい感覚を与えてくれる空間の世界観があれば、非日常を味わうことができます。
また、「そこでしかできない」、「今しかできない」体験も非日常を味わえる経験になります。ここで注目してほしいのは、"非日常"の相対性です。地元の人しか行かなさそうなローカルなお店で食事をすることは、地元の人にとっては日常生活ですが、旅行者には非日常な体験になり得ます。
3.推し旅
「推し旅」は好きなアーティストやキャラクターにまつわるイベントへの参加やグッズ購入、聖地巡礼などをする「推し活」と「旅」を合わせた言葉で、旅をしながら推しの応援活動を行うことを意味します。推し旅には好きなアーティストのコンサートやスポーツチームの試合などに行くための「遠征」タイプと好きな作品のロケ地や押しの出身地などを巡る「聖地巡礼」タイプがあり、ニッチではあるものの、熱狂的な支持を得ていることもあり、企業も注目しているトレンドです。
JR東海は「推し旅」企画でアニメ、アイドル、アーティスト、スポーツなど幅広いジャンルとコラボして旅行プランを提供しています。
また、JTBは日本で唯一のMLB公認オフィシャルホスピタリティ&トラベルパッケージ提供会社として、MLB™ 2024レギュラーシーズンの観戦チケット付きツアーだけではなく、今年3月韓国・ソウルで開催されたWorld Tour 2024 開幕戦やMLB ALL STAR GAME 2024など、様々なイベントに絡んだ旅行プランも提供しています。
コンテンツトレンド
旅行に対する人々の好みやニーズが多様化している2024年。動画コンテンツを中心としたマーケティング戦略の重要性が増々高まっています。そこで、動画コンテンツの中でもライブとショート動画を活用した事例を紹介いたします。
ライブとショート動画を活用して旅行のワクワクを生々しく
Grip Cloudのクライアント様「Verygoodtrip」では毎週水曜日午後7時、ライブを通じて旅行プランを紹介しています。
特徴およびインサイト
- サイパン、台湾、中国など、短距離で気軽に行ける海外旅行先をキュレーション
- 旅行地の情報を盛り込んだセンセーショナルなショート映像を通じて興味を誘導
- 主な購買層である3040の自由な旅行を好むニーズに合わせた商品構成
- 決済誘導のため、部屋のアップグレード、現地ツアーの無料提供などの特典を提供
最後までご覧いただきましてありがとうございます。より多様で具体的な活用事例が気になる場合はお気軽にお問い合わせください!